頭はエビ、体は人間。活動10年を超えたハイパーエビ集団が表現するのは“溺れたエビ達が生息する水中の世界”。 スリリングでプリミティブ、 最高に奇妙なサウンドが人間ドモのハートを鷲掴みに!
人間ドモ! ソノ耳ト目デ! 確カメルノデアル!!!

怪人“溺れたエビ・総帥”と総合演出“山本-慶”が率いるマルチアート集団にして、ハイパーエビ集団“溺れたエビの検死報告書”。日本中から多数のミュージシャンやパフォーマー、芸術家が招集され、精巧なエビの仮面を装着。多種多様な楽曲は、 ファンクから特撮怪獣映画のような重厚な曲、またエレクトロやアンビエントテクノまで多岐に渡る。本領を発揮するライブでは、ステージだけではなく客席やその他のフロアを全面的に利用した三次元的な演出に定評がある。そんなエビたちが活動10周年を迎え、遂に1stアルバム『アノマロカリス』をリリース。総合演出・山本氏とギューンカセット須原氏(レーベルオーナー)に話を訊いた。

「エビではないものを含めると、100匹ほどいます」

―どうしてエビを被ってるんですか?
山本:01年の秋頃に、京都の某ライブハウスからブッキングに誘われたんです。そのときは、1回キリの予定だったので、被りモノのバンドがやりたいなって。具体的に、何を被ろうかなって考えてるときに、当時飼っていたエビと目が合ったんです。そのときに「あ、エビいいな」って。
―飼っていたエビをみて閃いたんですね。
山本:それからマスクの制作期間を経て02年の1月にライブをしました。思った以上に評判が良くて「こっちも出てくれ」っていろんな所から誘われて、結局まだ続けています(笑)。
ーそのときから“溺れたエビの検死報告書”で活動していたんですか?
山本:当初の1年間くらいは「The Autopsy Report of Drowning Shrimp」っていう英語のバンド名でした。でも、みんなどう呼んでいいのか分からないらしく、結局「エビさん」って呼ばれるので、分かりやすい日本語にしました。長い名前と“溺れた”っていうワードは、僕が好きなフランク・ザッパのアルバム名『たどり着くのが遅すぎて溺れる魔女を救えなかった船(原題: Ship Arriving Too Late to Save a Drowning Witch』からの影響です。
ーライブによってメンバーが変わるそうですね。
山本:はい、メンバーそれぞれが他のバンドと掛け持ちをしているので、ライブ当日に都合の合うメンバーが出ています。今シーズンにステージに上がっているエビは9匹、その中でもレギュラーのエビが5・6匹で、他のメンバーは時期によって入れ替わります。
ー全部で何匹いらっしゃるんですか?
山本:エビのマスクは“004号”や“029号”というように、ナンバリングをしていて現在47号まで作りました。エビではないモノも含めると100匹ほどいます。
ーえっと、「エビではないモノ」っていうのは?
山本:最近はあまり登場しないんですが、バッタとか三葉虫とかですね。
ーバッタとか、三葉虫!
山本:三葉虫は、マドナシ君(キツネの嫁入り・Vo/Gr)やFLUIDのJxCx(Vo./G./Sampler )などがやってくれていました。
須原:おお!三葉虫、けっこう豪華やな(笑)。
ーエビの中の人は、おおやけにされてるんですか?
山本:初期は全員匿名だったんですが、そうするとあまりにも情報が発信されないので、2年程前から総帥以外は本名・顔出しOKということにしています。
須原:エビって人数多いから、僕の周りにも結構いたんだよね。本名・顔出しOKになってから「私、実はエビでした」「実は僕もエビでした」って、ぞろぞろカミングアウトしてきて(笑)。
ーマスクは、手作りなんですか?
山本:そうですね。(ガサガサ)これなんですけど。
エビ写真
ーエビだ!
須原:エビや!
ーこれは、どなたのマスクですか?
山本:総帥が使っているマスクですが、厳密にいうと033号です。総帥用は修理中なんで…(カチッ)。
ー目が光った!
須原:おお!
ー「第9地区」(※エビのエイリアンと人間のドキュメンタリーを描いた2009年の大ヒットSF映画)のエビよりも、すごくエビですね。
山本:「第9地区」や「えびボクサー」(※巨大なシャコのボクサーが登場するコメディ映画)にも言えるんですが、欧米人ってエビのコトをよく観てないと思うんです。デザインが雑なんですよ。もっとちゃんとエビを観察しろ!って言いたくなりますよ(笑)。

「1曲を作るのに、トラック数が100を超えていくんですよね」

ーとうとう1stアルバム『アノマロカリス』が発売されたましたが、いつ頃から制作されていたんですか?
山本:08年から作り始めて去年の10月に完成したので、丸4年かかりました。
ーずいぶんとかかりましたね。
山本:生楽器の録音自体はサクっと終わったんです。エビ専属PAさんのスタジオでの3日間合宿で生楽器のみを録音して、あとはエビの基地に持ち帰り自分でミックスをしました。
ーミックスに時間がかかったってことですか?
山本:そうですね。一度出来上がったモノを聴くと、奥行きの感じられないペッタンコの音になってしまったんです。イメージしてる感じのモノにならなかった。
ーイメージしてる感じっていうのは?
山本:“映画”です。映画みたいに「ウオーン」って奥から迫ってくる感じにしたかったので「どうしたらいいんやろう」って、真面目にチマチマと勉強しながらミックスを続けました。
須原:エビみたいな音数の多いバンドで遠近感出すのって、大変やろうなぁ。
ー奥行きは、どうやって出したんですか?
山本:実際には録音メンバーは6、7人しかいないんですが、その6、7人が繰り返し録って重ねて、あたかもオーケストラのような大人数で演奏しているようにするんです。そうすると1曲を作るのに、トラック数が100を超えていくんですよね。それから、1トラックずつのトリートメント作業を延々とやるわけです。そんなことを自分ひとりでしていると、こんなに時間が経ってしまいました(笑)。
須原:手間と根気がすごい。まさか一人でやってるとは思わなかった(笑)。
ーM-4「ワシャワシャ!! グギャギャギャギャ!!!」のイントロですが、これはどうなってるんでしょうか。ヘッドフォンで聴くと、意外なところから音が聴こえるんですが。
山本:そういうふうに作りました。映画館にはサラウンド用にスピーカーがたくさんあるでしょ。そのせいで映画館の音には臨場感があるんですが、そういったサラウンドのテクニックを一部拝借しています。位相で音の波形をひっくり返したりして、耳の錯覚で音を立体的に聴かせる疑似サラウンドですね。編集がめんどくさいので、一般的には音楽でそれを大々的に使うっていうのはあんまりしないんです。
須原:僕も使うことはよくあるけど、効果音的な意味合いでしか使わないね。
ー映画的な印象は、“アノマロカリス”っていうタイトルの付け方や、ジャケットのイラストにも感じます。
山本:ジャケットのイラストは、デザイナーの兒玉 旬さんにお願いしました。映画とか特撮が大好きな方で、よく二人で映画の話をしながら呑むんです。描いてもらって、大正解でしたね。

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